-好奇心-

よく晴れたある日の午後。
毛利探偵事務所ではいつもの様に依頼の電話が
鳴るのを暇そうに待っている小五郎の姿があった。
「こんなに天気が良いのになんでこんな所にいるんだろうなぁ。」
目の前の机に足を掛け、時々あくびをしつつもつまらなそうに呟く。
コンコン。
そこにドアのノック音が響いた。
「あー?誰だぁ?開いてるよ。」
ガチャ。
「お父さん、さっきから携帯鳴らしてるのにどうして取ってくれないのよ?」
ドアを開けて入ってきたのは小五郎の娘の毛利蘭だった。
見かけは普通の女子高生だが、その実武術に長けており
そこら辺の男には負けない位の実力をもっていた。
家では家事全般もこなしており、小五郎にとっては
頭の上がらない人物の一人だった。

「携帯?あぁ、すまん。上着のポケットに入れてそのままロッカーに
入れちまってたよ。」
「もう!いっつもこうなんだから。もっとシャキッとしてよ。」
蘭はため息を付くと思い出した様に両手を叩き、小五郎の
近くに歩み寄った。
「あのね、携帯に電話したのは依頼があったのよ。」
「なにぃ?それを早く言ってくれよ!で、誰だ?」
「えっと・・よく聞こえなかったんだけど・・多分この先の
お金持ちの家の人だったと思う・・・・。」
「金持ちぃ!?よっしゃちょっくら行ってくる!」
「あ、お父さ・・・・!」
小五郎は蘭の言葉が終わらない内に走って出て行ってしまった。
「はぁ〜・・よく聞こえなかったけどって言ってるのに・・。」
「蘭ねえちゃん、どうしたの?」
その声に振り返ると小さな男の子がにっこりと微笑んで立っていた。
少年の名前は江戸川コナン。
実は蘭の幼馴染で少年探偵とまでうたわれた天才探偵「工藤 新一」の
変わり果てた姿でもあった。無論、その事を蘭は知らない。
「あ、コナン君。・・ううん、何でもないの。」
蘭は苦笑いをすると腕時計を見て慌てだした。
「あ!いっけない!後3分で商店街のバーゲンが始まっちゃう!
コナン君、急いで行くわよっ」
「え?あ、蘭ねぇちゃ・・・・!」
コナンは蘭に腕を掴まれ、そのまま空中に浮く勢いで引っ張られていった。

「んふふv今日は良い買い物が出来たなぁ。」
「・・・・一杯買いすぎじゃない・・?」
帰り道、蘭とコナンの両手には紙袋が抱えられていた。
あの後バーゲンに間に合い、欲しいものを手に入れられた満足感からか
蘭は上機嫌で事務所への道のりを歩いていた。
それとは反対に、コナンはぐったりとした雰囲気で重い紙袋を
落とすまいと必死に彼女の後をついていく。
『ちっくしょ〜・・蘭のやつ、こんなにたくさんの荷物を小学生に
普通持たせるかよっ。』
コナンは蘭に聞こえない様に呟いた。

「コナン君ありがとう〜。今日はカレーにするからね。」
事務所に付くと蘭は台所に紙袋を置き、せかせかと夕食の用意に
取り掛かった。
「ふぅ・・やれやれ。いくら中身が高校生でも体は
小学生だからなぁ・・・紙袋が重いったら・・。肩がこっちまう。」
事務所のソファーに座り、コナンはやっとこさ開放された体のあちこちを
手で揉んでいた。
「そういえば・・おっさんは今日帰って来れるのかな?」
金持ちの家での事件らしいから今日は戻って来ないかもな・・。
そうぼんやりと考え、ソファーで横になっていたコナンに蘭の声が聞こえてきた。
「コナン君。ご飯出来たよ〜。」

夕食が終わり、それぞれが風呂に入るとそろそろ就寝の時間が迫ってきた。
「お父さん、やっぱり今日は帰ってこないね。戸締りをして寝ちゃおうか。」
蘭はパジャマの上に上着を一枚はおりあちこちの鍵を掛けに部屋を出て行く。
コナンはそんな蘭を見送り自分の部屋に向かおうとした。
「あ、ちょっと待って。」
「?なに?」
「今日は一緒に寝ようか。」
「・・・・えっっ!?」
いきなりの彼女の言葉にコナンは目を丸くさせた。
「お父さんも帰ってこないし・・それに今までコナン君と一緒に
寝た事がないなぁって思ったから・・ね?いいでしょ?。」
にっこりと微笑む蘭の顔をまともに見れず、コナンは顔を真っ赤にさせて
下を向き・・・・頷いた。

                        続く