-スレイブ・リナ-

「お腹減った〜〜〜!」
リナ・インバースを含めガウリィ・アメリアの一行は新しい町に付くと
宿屋探しを置き、真っ先に食事の出来る建物を探し始めた。
「あ、あそこなんてどうでしょう?「今日のお勧め定食」なんて書いてありますよ!」
紫色の髪の毛をなびかせアメリアは古びた一軒の食堂を指差し駆け寄っていく。
「ん〜・・へぇ、結構安いじゃない。これならお腹一杯食べられるわ。」
その看板を見ながら、リナはにやりと笑みを浮かべると意気揚揚と
店の中に入っていった。

それから数時間後。
店の主人に呆れられながらもリナ達はまだ食べまくっていた。
特にリナとガウリィ二人の食欲は凄まじく、目の前のテーブルには
からっぽの皿が山と積まれている。
「はぁ〜、あんたらよく食べるね〜〜。こんなに美味そうに食べてくれると
こっちとしても嬉しいもんだ。よし。今日はサービスしてあげるよ。」
主は笑ってそう言うと奥から新しい料理をいくつか運んでテーブルの上に置いた。
「やったぁ〜〜!ほら皆、せっかくのサービスなんだから食べなきゃv」
リナは嬉しそうに声を上げると持ちっぱなしのナイフとフォークを振り上げ
料理を突付き始めた。そしてガウリィも後に続くように勢い良く料理を食べ始める。
「・・・お二人とも・・・何処に食べ物をしまってるんですか・・?。」
アメリアは二人の恐るべき食欲を前に、げんなりとした表情を作り頬杖を付いて
彼らの野獣のような食べっぷりを眺めていた。
「おじさんごちそう様〜〜v」
それから更に数時間、食事の限りを尽くしたリナ達は満腹のお腹を
叩きながら店を後にし宿屋を目指して歩き始めた。
「いやぁ、あそこの料理は美味かったなぁ〜リナ。」
同じく突き出た腹を叩いていたガウリィは上機嫌で話し始める。
「ほんとよね〜。今度ここに来た時にはもっと食べなきゃv」
「あぁ、安いし美味いしおやじも良い人だし・・・・また利用させてもらおうぜ。」
「・・もっと食べるって・・全く、化け物ですか・・・ごほん、とにかく
私は宿屋を見つけてくるのでお二人はここで待ってて下さい。」
そう言い残すとアメリアは道の向こう側に走って行き、そこ等辺の人間に
聞き込みを始めたようだった。

「なぁ、リナ。さっきから変な感じがしないか?」
ガウリィはそっとリナに耳打ちをし辺りを見回す仕草をした。
「・・・そうね、確かに店を出てからずっと誰かに付けられているみたい。」
「敵・・・・か?」
「さぁ、それは判らないわ。この気配は・・モンスターじゃなさそうだけど。」
「もしかして、ナー・・・。」
何か禁句を言いそうになったのかガウリィの言葉が終わらない内に
リナの剣が彼の顔スレスレに振り下ろされた。
「その名前は出さないでっっ!」
「ちょっ!ちょっと待て!!まだ言い終わってないじゃないかっっ。」
剣を反射的に白羽止めをするとガウリィは声を張り上げた。
「その名前を聞くと背中がムズムズしてくるのっ。もう一度言ったら
ドラグ・スレイブかますわよっっ!」」
「わ、判ったよ・・!だからこの剣を引っ込めろ!」
リナは大きく息を吐くとゆっくりと剣を元に戻していった。
「・・・この気配、あいつじゃないと思うわ。」
「そ、そうか・・・(ぜぇぜぇ)。じゃあ一体・・・」
と、そこへ元気な声が響き渡った。
「リナさん!ガウリィさん!宿が見つかりましたよ〜。早く行きましょう!」
見ると、道の向こう側でアメリアが両手を振ってはしゃいでいる。
「とにかく今は宿に行って休もう。」
「そうね・・・。」
二人は後ろに一瞬だけ視線をやるとアメリアの居る場所に向かって歩いていった。

「あ〜疲れた。アメリア、明日はギルドに行って仕事探そうか?」
「そうですねぇ〜・・。でも何もしなくてもいつも事件が起きてませんか?」
「あはは・・・そういえばそうかもね・・。」
部屋のベッドに寝転がり、リナとアメリアはしばし雑談をしていた。
「でも、リナさんとガウリィさんは凄いですよね!あんなにご飯
食べたのにここに付いたらまた食べてるんですもん。」
「ん〜、お腹が空くのは自然の摂理ってもんよ。」
「リナさん達の場合は特別ですっ。」
そんな他愛の無い話を暫くしているとリナはいきなり鋭い目つきで
窓の方を凝視しはじめた。
「・・?どうしたんですか?」
彼女のただならない雰囲気にアメリアは不安そうな顔で尋ねる。
「うん、さっきも感じたんだけど・・変な気配がするのよ。」
「変な気配?モンスターですか?」
「違う。人間っぽいんだけど・・・!?」
その瞬間目の前の壁から人間の手らしき物がニョッキリと伸びたかと思うと
そのまま体らしき物体が壁から現れはじめた。
「な・・・!だ、誰!?」
リナは身構えアメリアと部屋の隅のほうに体を寄せる。
月の光が弱く、逆光のせいか顔すら判らないがその影はかなり大きく
まるでモンスターのようだった。
「〜〜〜・・・。」
影は口を開き何か話している仕草をしているが言葉は分からない。
「アメリア、あいつが何言ってるか分かる?」
「い、いえ。私にもさっぱりです。ど、どうしましょう。
ガウリィさんを呼んでこれればいいのですけど・・・。」
後ろでアメリアは震えながら呟く。
「あたしが囮になるからその隙にガウリィを呼んできて。」
言い終わるとリナはすぐに短い呪文を唱え始めた。
「フレア・アロー!!」
瞬間、リナの両手から炎の矢が飛び出し影に飛んでいく。
「今よ!行って!!」
そう後ろのアメリアに叫ぶと剣を抜いて影に向かい走り出した。
それを合図にアメリアはすぐさまドアを開け廊下に出ると
ガウリィの部屋に向かった。

「リナ!大丈夫か!?・・・・!?」
それから暫くしてガウリィとアメリアが部屋についた頃、リナと影の姿は何処にもなく
部屋の中はめちゃくちゃに壊されていた。
「り、リナさん・・さらわれちゃったんでしょうか?」
「あいつがそんな簡単に捕まるとは思えないが・・一体何処に行ったんだ・・・。」
ガウリィは呟くと呆然と部屋の中に立ち尽くしていた。

                              続く