【1】
その日は朝から何かが違っていた。

…誰かに見られている気配がする。視線を感じる。
その視線は放課後になっても春奈を襲っていた。

嫌な視線を向けられる。しかも、知らない所から。
それは勿論、春奈にとって気持ちのいいものではなかった。

校外風紀委員―――。
生徒達の風紀を取り締まっている、この学園のみに存在する風紀委員のことだ。
学内の荒廃を防ぎ、また他校の不良より本校の生徒達を守る為に生徒達で自主的に組織された由緒ある委員会。

当初は学業より正義感及び戦闘力を重視してスポーツ系の猛者からただの喧嘩好きまで様々な生徒が集められ他校の不良たちと壮絶な戦いを演じた。
しかし現在は戦闘力より規律態度を重んじる風潮が強いため以前ほどの戦闘力は無いが、今でも他校からも一目置かれ生徒達には頼もしく―――そして、怖い存在となっていた。

そのスクールガーディアンの一人である舞風 春奈。
春奈は朝から自分をつけ狙う視線に苛立っていた。


「卑怯なまねは止めて、正々堂々と闘ったら?
それとも、私と闘うのが怖いの?女の私と!」

校外巡回は普通、数人の委員と班行動で行う事になっている。
これは様々なトラブルに巻き込まれた時の為だったが、正義感が人一倍強い春奈は風紀委員としての活動以外にも、一人で町を巡回する事が多かった。
そして春奈は今日も一人で行っていた校外巡察の途中で立ち止まり、その正体不明の怪しい影に大きな声で言ってやった。

向こうから仕掛けてこないなら、こっちから仕掛けるだけ。
それが春奈のやり方だった。

「どうしたの!?かかってこないならこっちから―――」
「―――随分威勢がいいな?
でも、お前はこれで終わりなんだ…よッ!」
「―――ふっ!?
…んっ…んぅっ…むぐっ…!!」

前からの視線に気を取られて、後ろを疎かにしていた。
後ろからいつの間にか男が現れ、春奈の身体を抱きしめるような形で口をハンカチのようなもので塞いでしまう。

「………!?な…っ…
…な…に…!?」

―――そこで、春奈の意識はなくなった。


つづく