-お出かけ2-
『くくく、今からその「何か」が起きるんだよ。楽しみだ…』
高崎は笑いをこらえながら作戦を実行する事にした。

「お嬢様、今日はちょっと遠回りをして帰りましょう。この間
すごく景色の良い場所を見つけたんですよ。」
「景色の良い場所?」
「えぇ、銀座ばかりじゃ息もつまります。たまには景色の良い所に
行って気を紛らわすのも良いんじゃないかと思いまして…」
「そうねぇ…じゃ、お願いするわ」
たまには良い空気を吸うのも必要よね。高崎には感謝しないと。
「判りました。それではその場所に着くまでお嬢様はゆっくり
お休みください。着いたら起こして差し上げますから」
「…えぇ、ありがとう。そうさせて貰うわ」
久しぶりに人ごみの中を一人で歩いた疲れか、高崎の台詞を聞いてすぐに
すみれは静かな寝息を立て始めた。

「…壌様、すみれお嬢様。」
どれ位経ったのか、すみれは肩を揺すられハッと目を開く。
「あ…高崎」
「すみれお嬢様、ちょっと遠出でしたが着きましたよ」
すみれが開かれた車のドアから出ると、その風景の美しさに一瞬息を呑んだ。
目の前には静かな湖があり、その周りを覆うかの様に木が茂っている。
その緑の色はとても鮮やかで何とも言えないコントラストを醸し出し、
後方には山がそびえ湖面には日差しが跳ね返りまるで星の様にきらめいている。

「…綺麗…」
「どうです?凄く素敵な場所でしょう?」
「本当に素敵…高崎、いつこんな場所を?」
「あはは、僕はお嬢様よりは時間がありますから。それに
こういう場所を探すのが好きなんです」
「そう…」
「そこの切り株に座って暫くぼーっとしましょうか」
高崎はそういうと、胸ポケットからハンカチを取り出し近くの
切り株の上に置いた。
「さ、どうぞ」
「ありがとう、高崎」
すみれはその上に腰を下ろし目の前の絵画の様な風景をずっと
眺めていた。時間を忘れるとはこんな時の事を言うのだろう。

そして小一時間ほど経った時、後ろの方から突然誰かの悲鳴が聞こえた。
「うわぁ!」
「!えっ!?」
その声が高崎のものだと知ると、すみれはすぐに立ち上がり
後ろの森の中を全力で走っていく。
「!」
すると目の前に頭から血を流し倒れている高崎がいた。
「高崎っっどうしたの!?何があったの!?」
「お…お嬢様…怪しい二人組みが…早くお逃げ下さい…」
「怪しい二人組み?」
そういえば最近、刑務所から脱獄した囚人が二人いるってニュースで…
まさかその二人?
「!!お嬢様、後ろ…!!」
「え?…むぐっっ!?」
突然すみれの後ろから手が伸び、彼女の口を押さえるとそのまま体を
担ぐ様にして何処かに連れ去られていく。
『高崎…!!』
すみれは片手を彼のほうに向け、徐々に遠くなる高崎の姿を見つめていた。

…ここは何処?…
担がれ移動をしている間に目にはマスクを掛けられ自分が何処に居るのか
すら判らない状況になっていた。
何かの建物の中なのだろうか…下には確かに床の感触がある。
すみれの両腕は後ろに回されしっかりと荒縄で縛られ身動きが出来ない。
体は支える物が無いため、横に転がったままの格好になっていた。
「あんた、良い所のお嬢様なのか?」
上の方から低い声が聞こえる。わたくしをさらった一人ね。
「そんな事を教える義理は無いわ」
「へへへ、気が強いなぁ。益々いたぶりたくなってきたぜ」
その横からもう一人の声が聞こえる。こっちは少し高い感じの声。
「こいつ、あの神崎重工の一人娘らしいぜ。さっき聞いた」
さっき聞いた…?誰に?
「へぇー、あの大財閥の娘か。こりゃ上玉な筈だ」
グイと顎を持ち上げられ顔をジッと見られているようだ。
すみれはすぐに反対側に思い切り顔を背け唇を噛んでいた。
「こんな可憐なお嬢様を好きに出来るとは…良い日だぜ」
好きに出来るって…どういう意味?
「な、何をする気なの!?」
「何って…決まってるだろうよ。へへ」
その台詞が聞こえ終わらない内にすみれの体が宙に浮いたかと思うと
柔らかい布の上に思い切り放り投げられた。
「痛っっ!!何する…きゃっ!?」
そのすぐ後にすみれの両側から伸びた四本の手が身に着けている白い
スーツをどんどん剥がしていく。
「ちょ…っっ!や、やめて!!」
「お、良い胸してんじゃねーか」
「本当だ!ぷるんぷるんしてうまそー」
両手が後ろにまわっている為、ブラを下にずらされ生身の胸を男たちの
目の前に晒されてしまう。
スカートは全部脱がされ下着一枚の状態。すみれはこんな屈辱は受けた事が
無く、あまりの事に言葉も出ない。

「お嬢様だけあって綺麗な体してるな」
「!!」
次の瞬間、両足にごつい手の感触がしそれが上下にサワサワと動くと
すみれの背筋には一瞬にして悪寒が走った。
「汚らわしい!触らないで!!」
精一杯声を張り上げるが、それが逆に男達に興奮を覚えさせてしまう。
「汚らわしいだってよ!お上品な言葉だぜ」
「ここから出る頃にはお嬢様も汚らわしい人間の仲間入りをしてるぜきっと」
喉の奥から搾り出す様な笑い声が耳に張り付く。
と同時に、彼女の体には一斉に二人の男が襲い掛かっていった…。

「…さてと、そろそろ良いかな?」
草の上にゴロンと横になりながら高崎は頭の血のりをハンカチで
ふき取っていた…勿論頭には怪我などは一切無い。
「あいつら、無茶な事をしてなきゃいいけどな」
高崎は立ち上がるとゆっくりと三人のいる建物へと足を運んでいく。
「昔の仲間とはいえ今は疎遠だったからなぁ…けど頼みを聞いてくれて
ありがたいぜ。…女一人を自由にして良いって依頼なら皆飛びつくか。ふふ」
鬱憤が溜まっていたあまり、昔の仲間にすみれを辱めて欲しいと電話で
依頼をしてみたが…さぁどうなっているのやら。

「後は仕上げだけだな…ふふふ」

続く