-アイミ-

タッタッタッ・・・・。
真っ暗な路地裏をひたすら走る少女がいる。
顔はまだあどけなさが残るほど幼く、ショートカットの
黒髪を揺らしながら走るその少女は何かから逃げる様に
必死に落ち着ける場所を探していた。

そして暫くすると目の前に使われていないであろうひなびた倉庫が現れた。
「あそこで休もう・・。」
少女は息を切らしくたくたになった体を引きずる様にその倉庫に入っていく。

彼女の名前はアイミ。
年齢は13歳。
体は年齢からは釣り合わない程に華奢で
見た感じ何処かの病院からの脱出を図った患者の様にも見える。
擦り切れた薄手のシャツに足首までの長いスカートに身を包んだ
アイミは、中に入ると暖を取れそうなものを物色し始めた。
倉庫の中には自分以外にも人が以前住んでいたのか生活用具が散乱している。
ボロボロになったやかん、所々が欠けて使えなくなった茶碗。
奥の方には木材とそれを入れてストーブ代わりに使っただろうドラム缶が
無造作に転がっていた。
「火を付けるものは・・・あ、あった。」
彼女は転がっているマッチの箱を取ると、ドラム缶に木材や新聞を突っ込み
炎の付いた数本のマッチを投げ入れた。
暫くして周りが暖かくなるとアイミは膝を抱え前に座り込み、ドラム缶から
勢い良くあがる炎を見つめ何かを考える仕草をした。

今から三年前、まだ10歳だったアイミは両親を不慮の事故で亡くし
全く会った事の無い金持ちの叔父に引き取られる事になった。
叔父は彼女にとても優しく可愛がってくれたが
ある日を境に叔父の彼女を見る目が変わっていった。
いつもの様に学校から帰り自分の部屋で着替えを済まそうと
制服を脱いでいた彼女の部屋に偶然叔父が入って来た事があり、少しだが
下着姿を見られてしまった。
その時叔父はすまないと一言言うと慌てて部屋から出て行ったのだが
次の日からはアイミが近くを通る度に叔父の絡みつく様な視線を
体に感じる様になっていき、彼女は徐々に叔父を避け始めていた。

そしてそんな状態が続いたある夜に決定的な事件が起こる。

「ん・・・?」
ベッドに寝ていたアイミはさっきから自分の体を何かが
這っている感触にうっすらと目を開けた。
『はぁ・・はぁ・・・。』
顔の近くでは荒い息使いをする黒い影が動いている。
よく見ると布団は剥がされ、着ていた筈のパジャマも脱がされ
下着だけになっている自分がいた。
「だ・・・誰!?うっっ!」
驚いて起き上がろうとする彼女の口を大きな手が塞ぎ
またベッドに押し倒すと両手をシーツで後ろ手に縛られ
口にもさるぐつわまでされ、アイミは全く自由が聞かない状態になってしまった
恐怖に怯え自分を見つめる少女にニヤリと笑う白い歯だけが闇に浮かび
同時に大きな黒い手が彼女に向かって伸びてくる。
『いやっ!』
怖くなったアイミはその手を避けようと左右に体を動かし足で手を蹴った。
「・・・っち。」
軽い舌打ちの音が聞こえると同時に、黒い手は彼女の両足の足首を掴み横にあった
残りのシーツでベッドの左右にある出っ張りにそれぞれの足首を
縛りつけ完全にアイミの動きは奪われてしまう。
今から何をされるのか・・考えるだけで彼女は自分の体が震えていくのを感じていた。

                              続く